生成AIによって、映像制作の参入障壁は急速に下がりつつあります。
かつては大規模な予算、撮影機材、専門的な制作チームが必要だった映像表現も、いまでは個人のクリエイターが短期間で試行できるようになりました。

一方で、目を引く映像を生成できることと、人の記憶に残る作品をつくれることは同じではありません。
モデルの性能が上がるほど、問われるのは、むしろ素朴な問いに戻っていきます。
何をつくるのか。なぜつくるのか。どのように編集し、音を重ね、一つの体験として成立させるのか。

そして、AIクリエイターが一人で多くの領域を横断できるようになったからこそ、逆説的に、誰とどのように協働するかが重要になり始めています。
今回、AI Creatorsでは、スウェーデン・ストックホルムを拠点に活動するVictor Morenoと、日本を拠点に活動するaratama 璞による対談を行いました。

*本記事は、Victor Morenoへのインタビューをもとに構成しています。本人の回答は、趣旨を損なわない範囲で日本語へ翻訳・編集しています。

プロフィール紹介

Victor Moreno|スウェーデン・ストックホルム

photo credit: Catherine Ward

Victor Morenoは、スウェーデン・ストックホルムを拠点に活動するAIクリエイター、映像監督です。
グラフィックデザイン、アートディレクション、エディトリアルフォトグラフィー、カルチャージャーナリズムを背景に持ち、AIを活用した映像制作、ブランド表現、ナラティブ作品を手がけています。
クライアントには、Telia Sweden、Netflix、Lunar Bank、Suicide Zeroなどが含まれます。

短編作品『狭間 Hazama』は、AI Film Festival Japanをはじめ、Cinema Shift Toronto、AI Media Festival(AIMF)Los Angelesなどで選出されました。
2024年にはRunway Top 50 Talent Networkのメンバーとなり、生成AI企業Luma Labsのコラボレーターとしても活動しています。

aratama 璞|日本・東京

aratama 璞は、生成AIを活用した映像、音楽、ライブ演出、空間体験を横断するFounder / AI Creative Architect / Artistです。
キャラクターデザイン、バーチャルヒューマン、MV、広告、イベント映像、オーディオビジュアル作品を手がけ、企画、演出、検証開発、制作を一貫して行っています。

近年は、完成映像を提示するだけではなく、AIVDJという実践形式を通じて、音楽、映像、空間、身体性、観客体験を接続する表現を探求しています。
また、AI Creatorsを通じて、AIクリエイターの発掘、育成、制作支援、企業との接続、新たな評価軸の構築にも取り組んでいます。
AIを単なる効率化の道具として捉えるのではなく、既存の表現領域を横断し、新しい創造形式そのものを設計することを重視しています。

Chapter 1 AIによって映像制作の扉は開かれた。しかし、作品の質は自動では高まらない

Victor Morenoは、AIによる映像制作の「民主化」を、まず冷静な事実として捉えています。
フィルムがデジタルへ移行したときと同じように、AIは、現像、撮影機材、照明、移動、制作スタッフなどに必要だった大きな費用を抑えます。
参入障壁が下がり、より多くの人が映像表現へ挑戦できるようになります。

しかし、その開放性は、両刃の剣ともいえます。

Victor Moreno

生成AIによって、映像制作のハードルは下がっています。
その結果、多くのノイズや平均的な作品も生まれるでしょう。
しかし同時に、その中から美しい作品が立ち上がる可能性もあります。

大切なのは、単に技術的に優れていることではありません。
作品が観客に届き、心に響く必要があります。

Sex Pistolsは、音楽的な名手ではなかったかもしれません。
しかし、彼らには、文化と社会のその瞬間に接続する目的がありました。

AIを扱うこと自体が重要なのではありません。
新しい可能性を、どのように創作工程や制作パイプラインへ組み込むかが重要なのです。

aratama 璞

AIによって、以前は専門的な制作会社へ依頼しなければ成立しなかった映像表現を、個人が試行できるようになりました。
ただし、生成できることと、作品として成立させることは別の問題です。

作品の数が増えるほど、一つひとつの作品が持つ重みは軽くなりやすい。
単に制作するだけではなく、なぜこの作品をつくるのか、どのような文脈で提示するのか、どのように人の記憶へ残すのかが問われます。
また、結果に対して作業以外の時間を十分に取れるようになったのも大きな変化です。

参入障壁が下がった世界で本当に希少になるのは、生成する能力ではなく、問いを立て、意図を持ち、思考し、判断する力だと思います。

Chapter 2 「モデルは楽器にすぎない」――作品を残すのは、意図とディレクション

生成AIツールは、急速に進化しています。
しかし、モデルの性能が高まるほど、個々のツールを使えること自体は差別化になりにくくなります。

問われるのは、モデルから何を引き出し、どのような体験へ組み上げるかという点です。
そこでは、個人が積み上げてきた実力や経験が問われます。

Victor Moreno

クリエイティブディレクション、審美眼、意図がすべてです。
モデルは、あくまで楽器にすぎません。
AIを扱うことは、獣を飼いならすようなものです。
自分のものにし、ビジョンの方向へ曲げていく。

最近では、生成AIを説明する言葉として、「サンプラー」という表現に惹かれています。
初期の作品ではFlux Reduxを活用しました。
要素を取り込み、サンプリングし、形を与え、調整しながら、自分が本当に求めているものへ変化させていく。

これは、音楽家、映像監督、アーティストが以前から行ってきたことと、本質的には変わりません。
ポップカルチャーを象徴する作品の多くも、サンプリングによってつくられてきました。
素材は借りたものであっても、その背後にあるビジョンは独自のものになり得ます。

aratama 璞

AI作品では、モデル名や生成技術が先に語られることがあります。
しかし、同じモデルを使っても、作品は同じにはなりません。

重要なのは、出力を受け取ることではなく、何を残し、何を捨て、どのような順番で見せ、どのような体験へ変換するかを判断することです。
AIクリエイターの価値は、生成の回数ではなく、判断の質にあります。

Victorさんの言う「楽器」という比喩は、まさに言い得て妙です。

Chapter 3 AI映像制作に残されている、本質的な課題

AI映像の品質は、短期間で大きく向上しました。
一方で、ショット間の一貫性、長尺シーケンスの制御、キャラクターの統一感、自然な感情表現、物語構造など、作品として成立させるうえで重要な課題は残されています。

Victor Moreno

AIを使った制作を始めた当初から、ショット間の一貫性、連続性、長尺シーケンスの制御は、大きな課題でした。
2026年に入り、キャラクターの感情的な深みも少しずつ扱えるようになってきました。
進歩は非常に速いと思います。

今日の限界が、明日には解決策へ変わる。
それがAIと仕事をする面白さの一つです。

目指す表現が明確であれば、必要な方法を柔軟に組み合わせて、ビジョンへ近づけていくことができます。
『スター・ウォーズ』では、プレキシガラスに手描きされたマットペイントが使われました。
AI制作も、それと大きく変わりません。

成果を最大化するには、text-to-videoだけに依存するべきではありません。
モーションキャプチャ、LoRA、video-to-videoなど、必要な方法を柔軟に取り込むべきです。

もちろん、一度の生成で美しい偶然が生まれることもあります。
しかし、その素材を作品として成立させるには、音響同期、効果音、音楽、編集テンポ、カラーグレーディングによって引き上げる必要があります。
生の素材を、本当に観客へ届くものへ高める何かが必要なのです。

aratama 璞

AI映像では、一つひとつのカットが魅力的でも、連続して視聴すると、作品として弱くなることがあります。
映像は、静止画の集合ではありません。
音楽、リズム、間、速度、構成、空間の変化を含む体験です。

モデルの性能向上は重要ですが、最終的に問われるのは、作品全体をどのように設計するかです。

偶然生まれた一枚の美しさ、動きの不制御性を、体験の軸の中へどのように据えるのか。
そこに、編集という行為の核心があります。

Chapter 4 AI映像の品質を決めるのは、モデルではなくワークフロー

長尺で完成度の高いシーケンスを組み上げるには、個々の生成結果だけではなく、制作工程全体を設計する必要があります。
参照画像、絵コンテ、ショット分解、コンポジット、編集、音響、カラーグレーディング。
モデルの周辺にある判断の積み重ねが、映像体験を左右します。

Victor Moreno

私にとって、重要なのは参照設計と編集テンポです。
それが作品を支える軸になります。

観客の脳は、一瞬で多くのことを捉えています。
ストーリーテラーとして必要なのは、言葉にしにくい違和感によって、観客を物語から離脱させないことです。
視聴中に「いま何時だろう」「明日は何をしなければならないだろう」と考え始めたら、観客はすでに作品から離れています。

一貫性、リズム、対話、音響、カラーグレーディング。
それらは、物語を届けるための味方になります。

本当の技術は、フレームの中に何を入れなくてよいかを知ることです。
観客自身に余白を埋めてもらう。
そこに魔法が生まれます。

モデルの周辺にある制作工程が重要になるかという問いには、明確に「そうだ」と答えます。

ただし、将来的には、未加工に近いモデル出力そのものが、一つの美学になる可能性もあります。
ローファイが、単なる技術的な制約ではなく、ジャンルとして定着したように。

aratama 璞

AIを使うと、追加できる要素は急速に増えます。
しかし、作品として強くするには、足し算だけではなく、大胆な引き算が必要です。

何を見せないか。どの瞬間に止めるか。どの程度の説明を残すか。

AIによって可能性が増えるほど、ディレクターや編集者の判断は重くなります。
「フレームの中に何を入れなくてよいか」というVictorさんの言葉は、ツールが豊かになった時代にこそ、重要になる原則だと思います。

Chapter 5 一人のAIクリエイターは、制作のすべてを背負えるのか

AIクリエイターは、従来よりも多くの工程を横断できるようになりました。
企画、コンセプト開発、ビジュアルディレクション、プロンプト設計、コンポジット、編集、音響、物語構成、ワークフロー設計、配信。
一人のクリエイターが担える領域は、確実に広がっています。

しかし、それは、一人ですべてを完結させるべきだという意味ではありません。

aratama 璞

AIクリエイターが多くの領域を担えるようになった一方で、作品の完成度をさらに高めるには、AIを理解している専門的なチームが必要になると考えています。
Victorさん自身は、AIクリエイターの役割をどのように捉えていますか。

Victor Moreno

AIクリエイターは、ディレクターであり、オーケストレーターのような存在だと考えています。
AIによって50%、60%、場合によっては70%まで進めることができます。
しかし、最後の工程が最も長く、最も難しいのです。

専門的な編集者、サウンドエンジニア、カラリスト(Colorist)の支援があると、明確な違いが生まれます。
AIとフルタイムで向き合ってきた2年間で、それを実感しました。
初期段階から、ワークフローの問題を解決する技術支援、画像レタッチを行うAIアーティスト、コピーライター、編集者、ポストプロダクションの専門家など、周囲のチームに助けられてきました。

2026年の現在でも、多くの大企業が、このようなチームを社内に構築できていないことは印象的です。
AIなら誰でもできるという誤解があります。
社内で試して期待する結果が出なかったとき、制作体制や専門性の不足ではなく、技術そのものの問題だと判断されてしまう。

米国は、おそらく先行しています。
英国でも一部の機会がありますが、Pythonやワークフロー構築など、エンジニアリングや技術力へ重点が置かれる傾向があります。

もちろん、スケーラブルで持続可能な仕組みをつくるには重要です。
しかし、映像表現として作品を成立させる側の専門性も、同じように必要です。

aratama 璞

AIクリエイターは、従来の制作者よりも広い領域を背負うことがあります。
企画、演出、生成、編集、音響、実装、配信までを一人で担えるようになった一方で、そのこと自体が限界にもなります。
また、優秀なAIクリエイターほど、既存の仕事に追われ、自分の最も野心的な作品に十分な時間を割けない場合があります。

重要なのは、誰が優秀かを判断することだけではありません。
そのクリエイターの長所は何か。どこを補完すると、作品が次の水準へ進むのか。どのような専門家、技術、資金、時間、制作環境が必要なのか。
答えは、クリエイターごとに異なります。

場合によっては、AIクリエイター同士の協働が有効かもしれません。
あるいは、プロデューサー、脚本家、編集者、サウンドデザイナー、カラリスト(Colorist)、エンジニア、アニメーションの専門家、3DCGデザイナー、マーケター、業界アドバイザーなど、既存領域の専門家との接続が必要かもしれません。

本当に強いAIネイティブ作品は、個人のビジョン、適切な協力者、制作支援、十分な時間と資金が重なったときに生まれると考えています。
AI Creatorsとしても、単に優秀なクリエイターを掲載するのではなく、それぞれの才能をどのように伸ばし、どのようなチームを組み、作品を次の水準へ引き上げていくかを考えることが、今後の課題です。

Lunar Bank – “Old Bankers” TV Commercial(2025)

Client: Lunar Bank
Production company: UNCUT
Executive Producer: Fredrik Skoglund
AD: Tor Söderholm and Victor Moreno
Copywriter: Erik Bergqvist
AI team: Ib Thorub, Lars Bjurman, Victor Moreno, Simon Appel
Editor: Karim Fakih
Colorist: Filip Bergh

Chapter 6 AI Film Festival Japanでの選出と、日本に感じる可能性

Victor Morenoのナラティブ作品『狭間 Hazama』は、AI Film Festival Japanで選出されました。
上映会場となったTokyo Innovation Baseには足を運べなかったものの、日本テレビが会場を取材し、NTV Newsで作品映像が放送されたことを知ったとき、大きな手応えを感じたといいます。

Victor Moreno

Tokyo Innovation Baseでの上映へ参加できなかったことは、本当に残念でした。
しかし、日本テレビが会場を訪れ、短編作品『狭間 Hazama』の映像を日テレNEWSで放送したと知ったことは、とても嬉しい出来事でした。

日本は、私にとって大きな意味を持つ場所です。
そこで評価を得られたことは、本当の贈り物のように感じました。

私は、ドミノ効果を信じています。
一つの出来事が、次の出来事につながる。
そしていま、こうして対話が生まれています。

仕事と個人的な旅行の両方で、日本を3回訪れています。
日本を訪れるたびに、未来へ旅をしているような感覚があります。
その感覚が変わらないことを願っています。

外から見ると、日本には、通常であれば同時に存在することが難しい二つの要素が、自然に共存しています。
古いものに根ざした内面的な静けさと、新しさ、革新性、意外性への強い志向。
その二つが自然に共存していることは、とても稀有です。

日本のクリエイターや企業が、自分たちのプロダクトをどのように考えているか。
その精密で丁寧な姿勢を、AIによって視覚化することには、大きな可能性があります。

映画、ゲーム、デザイン、建築、デジタルアート、ファッション、アニメーションスタジオにおける制作パイプラインの効率化。
あるいは、ゼロからのクリエイティブコンセプト開発。
日本文化に根ざした精密さと、型にはまらない創造的なアプローチが組み合わさるところに、本当に興味深いものが生まれると思います。
今後、日本でさらに多くの接点をつくれることを楽しみにしています。

aratama 璞

日本には、古い文化を保存するだけではなく、異なる時代の感覚を重ねる土壌があります。
AIを単に効率化の技術として扱うのではなく、日本独自の美意識、物語、音、空間、身体性と接続できれば、他国とは異なる表現が生まれる可能性があります。

Victorさんの『狭間 Hazama』というタイトル自体も、日本語に含まれる余白や境界への感覚と響き合うように感じます。
ものとものの「あいだ」を主題に据えることは、静かに通じているのかもしれません。

ただ、私の知る限りでは、日本国内の企業案件は、コスト効率や納期短縮を重視した活用が先行している印象があります。
一方で、表現追求やコンテンツ開発に向けた中長期的な検証は、個人のクリエイターが自費、あるいはAIツール各社のクリエイティブパートナープログラムを活用しながら担っているケースも少なくありません。

AIコンテストも増えていますが、参加費、評価基準、継続的な育成の仕組みについて、改善の余地がある企画も見られます。個人クリエイターの負担を抑えながら、挑戦を次の制作機会へ接続する仕組みが必要だと感じています。

Chapter 7 映画の先へ――ライブ、音楽、コード、リアルタイム表現

現在、AI映像の評価は、シネマティックな短編作品へ集まりやすい傾向があります。
しかし、AIが拡張するのは、映画制作だけではありません。

ライブパフォーマンス、音楽と同期する映像、広告、アニメーション、インタラクティブメディア、プログラミングを活用したビジュアル、生成アート、空間演出。
既存の映画制作という言葉だけでは捉えきれない表現が、生まれ始めています。

Victor Moreno

その可能性は、間違いなくあります。
私がComfyUIへ入ったきっかけは、TouchDesignerでした。

TouchDesignerは、インタラクティブな2D/3Dアプリケーション、リアルタイム・マルチメディア、生成アートなどを構築するための、ノードベースのビジュアルプログラミング環境です。
AIを構造、質感、動的なシステムへ統合する可能性は、とても大きいと思います。
2026年の時点でも、私たちはAIの可能性のごく一部しか活用していないと思います。

私は、自分自身のスタイルをつくるためのワークフローを構築しています。
それを案件の要件に合わせて変化させることで、より個性があり、ブランドに適合し、独自性を持つ作品へ近づけることができます。

Designers Republic、Tomato、坂本龍一、Bill Viola、Refik Anadol、池田亮司など、多くの表現者から影響を受けています。

今後は、TouchDesignerとComfyUIを接続する実験にも取り組みたいと思っています。
商業領域だけではなく、芸術的で抽象的な可能性があるはずです。

aratama 璞

現在、AI映像の評価は、映画的な短編作品へ偏る傾向があります。
コンテストや案件ベース、インプレッションなどの観点でプレイヤーが多い印象です。

しかし、AIによって変化するのは、映画制作だけではありません。
音楽と映像の同期、リアルタイム生成、ライブ演出、観客との相互作用、空間全体の体験設計など、従来の「映像作品」という枠だけでは測りきれない表現が生まれ始めています。
実験的なアプローチやクリエイティブの複合的な価値は、まだまだこれからです。

私は以前音楽をやっていたキャリアから、AIオーディオビジュアルという実践形式を通じて、完成映像を上映するだけではなく、音楽、映像、空間、観客の反応が共鳴する場そのものを探求しています。
新技術のキャッチアップや複合的な検証が長期的に続きそうですが、何か新しい体験を生み出せないかと日々試行しています。
AI Creatorsとしても、映画や映像だけに評価軸を限定せず、AIによって拡張される多様な創造表現に目を向けていきたいと考えています。

Chapter 8 AIという接頭辞が消える未来

3年から5年先を見据えたとき、Victor Morenoは、「AI」という接頭辞が消えていく未来を思い描いています。

Victor Moreno

AIという接頭辞は、いずれ消えていくことを願っています。
過去の技術革新と同じように、あらゆる制作工程の基盤へ溶け込んでいくはずです。

AIによって、創造と制作の境界は曖昧になりました。
最初から完成品が出てくるわけではありませんが、つくりながら実行できるようになった。
意思決定も、より速く行う必要があります。

コンセプト開発やプロトタイピングは、速く、安価になります。
ブランドやクライアントも、従来より少ない投資で、資金がどこへ向かうのかを視覚的に確認できます。
AIは破壊というよりも、制作構造の再編をもたらすものだと考えています。

健全な環境をつくるためには、チームは、より柔軟で、プロジェクトごとに変化できる必要があります。
クリエイター自身がプロデューサーとなり、制作チームが不要な場合もあります。
一方で、プロデューサーやポストプロデューサーを含む、完全な制作体制が必要な場合もあります。

多くのブランドが、データ専門家へ投資しています。
それは当然です。
しかし、AIを活用して、プロダクトの試作、デザイン、コンテンツ制作、マーケティング、ストーリーテリングを担える、社内のクリエイティブ基盤にも、同じ価値を見いだしてほしいと思います。

そして視聴者にも、AIを、人間を支配する異質な存在ではなく、タイプライター、カメラ、レンズ、鉛筆と同じような道具として受け入れてほしいと思います。

aratama 璞

AIを使っていること自体が価値になる時代は、長くは続かないと思います。
これから重要になるのは、どのツールを使ったかではなく、どのような感覚を生み、どのような人や領域を接続し、何を残したかです。

また、AIネイティブな表現が成長するためには、作品をつくるだけでは不十分です。
作品を評価し、文脈を与え、適切な観客へ届け、優れたクリエイターが継続的に制作できる環境をつくる必要があります。

単に作品数を増やすのではなく、優れたクリエイターと作品を見つけ、紹介し、育成し、次の制作機会へ接続する仕組みを構築する必要があります。
AIネイティブを理解した、適切な評価を与えてくれるメンターも必要です。
その先に、観客が記憶し、語り、AI表現の新たな始まりとして認識するような作品が生まれると考えています。

子どもたちの世代では、法制度や社会的なルールも一定程度整備され、AIクリエイティブは特別に意識されることなく、創作環境の一部として浸透しているのではないかと思います。

Victor Morenoが次に目指すもの――商業制作、ナラティブ作品、アート表現

Victor Morenoは、今後の活動として、三つの領域を挙げています。

  • 商業制作
  • ナラティブ作品
  • アーティスティックな表現

Victor Moreno

今後は、さらに多くの商業制作へ取り組みたいと思っています。
ブリーフを、実際の完成品へ変えていく仕事です。

同時に、次の短編作品にも着手しています。
『狭間 Hazama』が国際的な映像祭で評価されたことは、大きな励みになりました。
今後、資金調達の機会にもつながってほしいと考えています。

そして最終的には、より自由な芸術表現も探求したい。
ビデオアート、音楽やサウンドと同期するビジュアル作品。
商業的な要件を超えた場所にも、大きな可能性があると思います。

編集後記|AI Creatorsが考える、次の制作環境と評価軸

AIクリエイティブの価値は、映画的な完成度だけでは測れません。
AIによって拡張される表現は、企画、脚本、映像、音楽、ライブ、イラスト、プログラミング、広告、キャラクター、インタラクティブメディア、空間演出など、多様な領域へ広がっています。

同時に、作品の完成度を高めるためには、一人のAIクリエイターにすべてを背負わせるのではなく、それぞれの長所を生かしながら、専門家、評価者、技術、資金、時間、発表の場を接続する必要があります。

AI Creatorsでは、単にAIツールを扱える人を紹介するのではなく、AIによって新しい創造表現を切り拓くクリエイターと作品を見つけ、その才能がさらに伸びる国際的なコミュニティを構築していきたいと考えています。
また、映画的なAI映像だけに評価軸を限定せず、ライブビジュアル、音楽、アート、コード、Web、イラスト、広告、IP、企画、脚本、コラボ、コンテンツ開発、実験表現など、AIクリエイティブによって生まれる新しい形式にも目を向けていきます。

モデルの性能は、これからも進化します。
しかし、作品が人の心に残るために必要なのは、意図、判断、文脈、そして体験です。

AI映画の先にあるものは、単なる技術の進歩ではありません。
それは、創作の方法、チームのあり方、評価基準、観客との関係を再設計する、新しい文化の始まりなのかもしれません。

AIクリエイティブを、具体的に次の制作機会へ

AI Creatorsでは、AIによって新しい表現を切り拓くクリエイターの育成、発信、制作支援に取り組んでいます。
また、生成AIを活用した企画やコンテンツ制作を検討する企業・団体との協業も進めています。

新たな表現を学び、作品を磨きたい方も、AIクリエイターとともにプロジェクトを形にしたい方も、それぞれの目的に応じた入口から詳細をご覧ください。

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企業・研究者・クリエイターをつなぐ実践型プラットフォーム「AI Creators」の創設者・編集長。アート・メディア・テクノロジー領域を横断する専門家として、複数のデジタルメディアを統括し、AIを活用したデジタルプロジェクトの企画・推進に取り組んでいる。
生成AIを単なる制作ツールではなく、事業、表現、社会実装を拡張する基盤として捉え、AIネイティブな事業設計とクリエイティブ開発を推進。米国の専門メディアで「世界の注目AIクリエイター Top 5」に選出されるなど、国際的なAIクリエイティブ領域でも実績を重ねている。自ら第一線で検証と実装を重ねる中で培った一次情報と厳格な編集視点をもとに、AIクリエイティブとAIビジネスの現在地を、深く、わかりやすく伝えている。

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